vol.32 (2018)

情報メディア教育研究センター 研究報告
Vol.32, 2018 ISSN 1882-7594

表紙
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分子動力学法によるアルゴンの融解と秩序変数
片岡 洋右
受付: 2018年3月12日    PDF    抄録
アルゴンにおける融解を定圧および定積分子動力学シミュレーションで調べた。条件の圧力および体積を広範囲に変えて、融解に伴う熱力学量の変化の様子をあらかにした。相互作用としてレナードージョーンズ関数を仮定した。系の初期配置はFCC格子とした。基本セルに含まれる分子数は864である。カットオフ距離はセル長の半分とした。分子動力学のステップ数は1e6である。自己拡散係数の融点近傍での変化を調べた。融点近くにpre-meltingが明瞭に確認された。これは融解温度近傍で起こる分子の他のFCCサイトへの移動である。融解に関する秩序変数として、2体相関関数の第一極小値が適切であることを示した。
温度一定の分子動力学法によるアルゴンの融解曲線
片岡 洋右
受付: 2018年3月13日    PDF    抄録
分子動力学法シミュレーションによりアルゴンの融解曲線を求めた。初期分子配置として、固体領域と液体領域を含むものを使用し、短時間のシミュレーションで与えられた温度・密度において固体と液体のどちらが安定なのかあるいは共存状態なのかの判定できるようにした。分子間の相互作用としてレナードージョーンズ関数を仮定した。温度一定のNVTアンサンブルを使用した。基本セルの形は直方体である。基本セルに含まれる分子数は2592である。カットオフ距離は短いセル長の半分とした。得られた融解曲線は自由エネルギー計算の結果と良く一致した。また蒸気圧も求めた。
分子動力学シミュレーションによる荷電コロイド分散系における秩序構造の安定性
片岡 洋右
受付: 2018年3月13日    PDF    抄録
荷電コロイド分散系においてFCCの秩序構造の安定性を液体構造と比較した。使用した方法はあらかじめ基本セル内に固体構造と液体構造を共存させた初期配置を用い、定温分子動力学シミュレーションにより平衡構造を求めるものである。基本セルは直方体でその中に粒子を2592個含む。固体構造で液体構造を挟む形の初期配置と、液体構造で固体構造を挟む初期配置の2種類の初期配置を使用し、初期配置依存性の有無を確かめた。シミュレーションの結果、初期配置依存性はほぼ無いとの結論を得た。曾我見-伊勢理論を仮定し体積分率3%では860K以下の温度においては固体のほうが液体より安定であることが分った。
移流法による地盤の波動伝搬解析に関する定量的研究
中村 圭佑, 吉田 長行
受付: 2018年3月15日    PDF    抄録
近年,波動論的な観点から地盤の動的挙動が活発に研究されている.このような問題を扱う場合,有限要素法が有効かつ柔軟な手法であることはよく知られている.有限要素法を用いて無限もしくは半無限地盤を表現するためには開境界処理を行う必要がある.代表的な例として,境界にダッシュポットを設ける粘性境界が挙げられるが,完全な波動透過は実現されない.そこで,本研究では入射波と放射波を分離して扱うことのできる移流法に着目し,これを用いた新しい境界処理法の確立を目指す.その境界処理法の基礎研究として風上差分法を用いた2次元面外問題波動伝搬解析を行い、解析解との定量的な精度調査を行う.
超高負荷軸流タービン直線翼列内の翼端漏れ流れの挙動‐翼端間隙高さの影響‐
辻田 星歩, 金子 雅直
受付: 2018年3月16日    PDF    抄録
ガスタービンを構成するタービン翼の高負荷化は、翼枚数および段数の削減により、その小型軽量化を可能にする。タービン翼の高負荷化を図る設計方法の一つに翼転向角の増加があるが、翼端漏れ渦を含む二次流れの増強による損失増加を引き起こす。本研究では高転向角160°を有する超高負荷タービン直線翼列に対して、翼端間隙高さが翼端漏れ渦の挙動およびそれに起因する損失生成に与える影響について、数値解析的手法により調査した。その結果、漏れ渦に起因する損失は馬蹄形渦や流路渦に比べて高く、また、翼端間隙高さの増加に伴う漏れ渦の翼負圧面からの離脱距離の増加は、翼列出口での流れ角のアンダーターン傾向を強め、膨張率を低下させることを明らかにした。
遷音速軸流圧縮機内部流れの数値解析‐乱流モデルの影響‐
金子 雅直, 辻田 星歩
受付: 2018年3月16日    PDF    抄録
ターボ機械内部の流れをより高精度に数値解析するには、計算対象の流れ場に適した乱流モデルを用いる必要がある。本研究では、遷音速圧縮機の内部流れを数値解析する際により適切な乱流モデルを選択するために、詳細な実験データが公開されいてる遷音速軸流圧縮機 (NASA Rotor 37)の内部流れを2種類の乱流モデル(Spalart-AllmarasモデルとSST k-ωモデル)を用いて数値解析し、それらの計算結果の妥当性を調査・比較した。その結果、SST k-ωモデルの方が、遷音速圧縮機に特有な衝撃波の翼面境界層や翼端漏れ渦との干渉といった流動現象をより正確に捉えることが明らかになった。
Canvas 調査報告‐日本版NGDLEプラットフォームとしての可能性
常盤 祐司
受付: 2018年3月17日    PDF    抄録
米国Instructure社が提供している授業支援システムCanvasは、米国とカナダの大学における基幹LMSの2016年の新規導入案件において、77%ものシェアを獲得した。このCanvasは第三世代のLMSとも言われておりクラウドやスマートフォンを前提として開発されている。日本におけるCanvasの導入実績は現時点では少ないが、米国の状況を踏まえると今後導入が進むことが予想される。筆者は日本IMS協会の活動を通じ、Instructure社との関係を深め、Canvasを試験的に利用することができ、さらに公開されている情報からCanvasに関してある程度の知見を得られた。本稿では、(1)日本の大学での利用、(2)日本版NGDLEの学習プラットフォームとしての利用、(3)教育支援システムに関する研究・開発のプラットフォームとしての利用について、それらの可能性を評価することを研究課題として調査を行った結果について報告する。
建物の基本的動特性に対する同定手法の検討
河井 雄登, 末崎 和宏, 吉田 長行
受付: 2018年3月20日    PDF    抄録
古い建物の耐震性能を正確に把握するためには構造モデルを適切に評価する必要がある。近年、このために固有円振動数や減衰定数といった建物の基本的な特性を同定する手法が強く求められている。その手法の一つとして常時微動下における建物を観測し、その振動特性を推定する方法が挙げられる。本研究では、部分空間同定法の中でも基本的な方法であるMOESP法を用いて、常時微動観測で得られたデータからこれらの基本的動的特性を抽出する手法について探ったものである。
フェニルカチオンの気相安定性に及ぼす置換基効果
中田 和秀, 藤尾 瑞枝
受付: 2017年10月30日    PDF    抄録
フェニルカチオンの気相安定性に及ぼす置換基効果を計算化学的に決定し,湯川−都野式で解析した。置換基効果解析の結果,ρ = –22.73, r+ = –0.20が得られた。para –R基を導入したフェニルカチオンはエンベロープ型の構造を示し,NBO解析によってカチオン中心とベンゼンπ電子系との軌道相互作用が明らかになった。平面固定フェニルカチオンの置換基効果解析との比較から,フェニルカチオン系にはそのような軌道相互作用を通した直接共鳴効果が作用しており,低い相関精度と合わせて,理想的なσ0基準系として適切でないことが明らかになった。