vol.15 (2002)

計算科学研究センター 研究報告
Vol.15, 2002 ISSN 0913-8420 2002年3月23日発行

スペースデブリ衝突の数値シミュレーションと可視化
-低速度衝突における解析と検証実験-

杉原健司、安田雄治、新井和吉、田中豊
PDF   抄録
近年、宇宙開発が進むにつれて、使用済み人工衛星の破片などの宇宙ゴミ(スペースデブリ)が増加し、スペースデブリと宇宙構造物との衝突が重要な問題となっている。本研究では、スペースデブリ衝突時における宇宙構造物構成材料の損傷機構を解明し、その防止策と設計指針を最終目的としている。研究の第一歩として、スペースデブリと宇宙構造物の構成材料をそれぞれ模擬した衝突材と被衝突材を用いて、これらが低速度域で衝突した際の、衝突材の運動挙動および被衝突材の損傷挙動の数値シミュレーションを行った。また、解析結果の妥当性を検討するため、衝突現象の可視化実験および損傷実験を行った。
臨場感をともなう演奏用遠隔教育システム
荒新吾、田中豊
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近年,コンピュータを用いた教育(CAI)が様々な教育の分野で実験的に行われている.しかし従来のCAIは,コンピュータの性能やデータの通信速度の限界により,テキストや静止画像を中心に構成された臨場感に欠けるものが主であり,教材などの適用分野も限られていた.本研究では,臨場感をともなう遠隔教育システムの開発の一環として,バーチャルコンサートホールの概念を用いた遠隔教育システムの構築を行う.全体のシステムと教育用アプリケーションの開発を行い,システム上での試験運用の結果からシステムの評価と検討を行う.
管路内旋回流れの可視化と可触化
柏原慎太郎、田中豊、鈴木隆司
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計算科学の分野では膨大なデータをわかりやすく人間に伝えることが重要な課題である.しかし,シミュレーション等により求められる複雑な数値データを,一覧表や図だけで直感的に理解することは困難である.本研究では,直感的に理解することの難しいとされる流体の流れ場に対して,体感的な手法を導入したデータの可視化と可触化を行った.流れ場に仮想的な粒子を配置する視覚的効果に加えて,数値解析の結果求められる速度や圧力分布データから,流体の流れ場におかれた点にかかる抵抗力を計算し,流れに擬似的に触ることにより流れ場を体感する接触感覚的効果により,複雑な流れ場の直感的把握を実現した.
イベント送信型遠隔操作システムの提案
近森秀俊、田中豊
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遠隔操作における問題点は通信時間遅れとそれによる操作者の作業負担である.本研究では遠隔操作の一手法としてイベントという概念を導入したイベント送信型遠隔操作システムを提案し,実システムに適用して,操作者の作業負担の軽減と作業効率向上の効果について検討を行った.その結果,再利用可能な作業をデータ化することにより,操作者の作業負担が軽減できることが明らかとなった.
入口に障害物を置いた流路内に生じる逆流の数値解析
B.H.L.Gowda、水木新平
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流路入口に障害物を設置すると、流路内部に逆流が生じる。この現象は、はく離、再付着および剪断流れの干渉を含む。この現象については様々な観点から多くの実験的な研究がなされてきた。近年の数値流体解析技術の進歩により、このような非定常流れを解析することが可能となっており、本研究では逆流の挙動を究明するための第一段階の解析を行った。
メタノールの分子動力学
秋野洋佑、片岡洋右
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多原子分子では、その分子内においてわずかな結合長の伸縮や結合角の増減が起こる。しかし、分子動力学法シミュレーションでこれらの分子内の自由度をよく再現することは難しく、分子を剛体として扱ってこれらを無視する場合もある。本研究では、液体メタノールの分子動力学シミュレーションを行い、シミュレーションにおける、分子内自由度による影響を調べる。
半経験的分子軌道法によるエステルの反応解析
近藤淳史、片岡洋右
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酸触媒を用いたエステル交換反応(アルコーリシス反応)や、エステルの加水分解反応、エステル化反応は一般的にエステル(あるいはカルボン酸)分子と溶媒分子(アルコールや水)との比が、1対1の反応であると考えられている。本研究ではこれらの反応について、反応経路およびそれに伴うエネルギー変化をMOPAC(半経験的分子軌道計算プログラムパッケージ)を用いて解析した。その結果1対1で反応させるより1対2で反応させた方が、エネルギー的に有利であることが確認できた。
心筋SPECTにおける最適投影データを用いた画像再構成
大野覚、尾川浩一
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本研究の目的は、半導体検出器を用いた心筋SPECTにおける新しい投影データ測定法と3次元画像再構成法を開発することである。提案する手法では、心臓により近く検出器を設置すること(平面内90°体軸方向120°内)で、高いSN比を有する投影データを収集する。本報告では再構成画像の画質を保持し、使用する投影データ数を最小とする最適な投影データ測定位置を、投影データのパワースペクトルとデータ間の相関性により決定した。この結果、提案する手法では僅か8投影のデータを用いても、通常の60投影を用いた結果と同画質の画像を得ることができた。
少数方向の投影データを用いた正確な血管画像再構成
梶浦勇生、尾川浩一、国枝悦夫
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本研究の目的は、少数の二次元投影データのみを用いて、血管を正確に再構成することである。少数のデータからの画像再構成では逐次近似法の一つであるMAP-EM法が有効であるが、これは収束が遅く、さらに微細血管を正確に再構成することが難しい。この問題を解決するため、提案する再構成手法では再構成過程を二つのステップに分けた。第一ステップではMAP-EM法により推定画像を得る。次にその推定画像を用いて新たなペナルティ関数を組み込んだ再構成を行う。ここで導入したペナルティ関数は血管の連続性を考慮するものである。本論文ではこの手法の有効性を証明するためシミュレーションと実験を行い検討した。その結果、提案する手法では収束性の問題が改善され、再構成画像で微細血管が途切れにくくすることを可能とした。これにより、より正確な三次元血管画像再構成を実現できた。
心筋SPECT画像における画質劣化の定量的評価
永瀬克、尾川浩一
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SPECTの再構成画像では、データ収集時に心筋の動きによるぼけが発生する。この他、光子の吸収やコンプトン散乱により再構成画像は劣化する。また心臓に近接した肝臓からの散乱線がSPECT画像の劣化を招く。本論文ではNorth Carolina大学において開発されたdynamic MCAT(DMCAT)ファントムを用いて心筋SPECT画像の画質劣化に関して心臓の動きの影響、吸収の影響、肝臓からのコンプトン散乱線の影響を計算機シミュレーションによって考察した。この結果から心筋の定量的な再構成に位相を考慮した心電同期型SPECTの実施が不可欠であること、正確な吸収補正が必要であること、並びに肝臓からの散乱線を極力除去できるデータ収集ジオメトリが重要であることが示唆された。
2核種同時収集型心筋SPECTにおける散乱補正法の比較
山田直樹、尾川浩一
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99mTcにと123Iを同時に用いたSPECTでは、互いの光電ピークエネルギーが隣接しているため、99mTc,と123Iから放射したプライマリ光子による再構成画像はお互いの散乱光子や相手のプライマリ光子によって劣化してしまう。この問題を解決するために、我々は1999年に入力層:10,中間層:20,出力層:2という3階層構造のネットワークを持つニューラルネットワークを用いた新たな手法を提案した。同年El Fakhriらもまた我々と類似した手法を提案し、良好な結果を得ることに成功している。我々の手法と彼らの手法との主な違いは、出広いエネルギーウィンドウの設定範囲、(2)狭いエネルギーウィンドウの幅、(3)プライマリ光子数の計算方法、の3点である。本論文において、以上の点についてニューラルネットワークを用いた両手法の性能をシミュレーション及び実験データによって評価した。シミュレーションでは、MCATファントムを使用し、OS-EM 法により画像再構成を行った。また、性能の評価は再構成画像の平均二乗誤差を計算することによって調査した。実験では、6つの関心領域を設定し、その中の濃度値を測定することで性能を評価した。その結果、我々の提案する手法が彼らの提案する手法よりも優れていることが確認できた。
固体力学における自然要素補間に対する考察
小野啓太郎、武田洋
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固体力学において有限要素法(FEM)はよく知られた補完スキームである.一方,自然要素法(NEM)は最近になって注目されてきた補間スキーム(Sibson補間)であり, Voronoi図とDelaunay三角形を背景とした自然近傍座標を基礎としたメッシュレス解法である.この論文では従来のSibson補間に加え,自然要素法の新しい補間(非Sibson補間)を導入し,数値解析を通してその有用性について検討する.
旅客機客席構造の耐衝撃性向上に関する解析的研究
細川剛史、熊倉郁夫、峯岸正勝、岩崎和夫、武田洋
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航空機が胴体着陸などをした場合に,機体がその衝撃をある程度吸収することができれば,生存率を向上させることが可能となる.しかし,現在の航空機はこのような設計は行われておらず,座席の動的試験基準のみが設けられているに過ぎない.本研究では,航空機が胴体着陸した時に人体に及ぼす衝撃荷重を推定することを目的に,ANSYS/LS-DYNAを用いて,一般的に利用されているワークステーションレベルで胴体着陸時の航空機の挙動を把握する研究を行った.また,航空機のリベット締結部の処理方法などについて材料定数の観点から検討を行った.
細密数値情報の活用による土地利用変化を考慮した流出解析
酒井健博、小寺浩二、岡泰道
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本研究では、地理情報システム(GIS)を用いて、国土地理情報のひとつである細密数値情報を分布型流出モデルに適用し、鶴見川上中流域を対象として流出解析を行った。有効降雨の推定方法や流出抑制効果の評価の検討が必要であるものの解析値は実測値とほぼ符合する結果となった。さらに、1974年から1994年の5年毎の細密数値情報(10mメッシュ土地利用)データを用いた結果、不浸透域の拡大に伴う流出量の変化を確認することができた。
アンカー工に用いる法枠の三次元応力解析
大木裕久、竹内則雄
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法枠工は,法面に格子状あるいは亀甲状の枠を設け,風化,浸食,崩壊等を防止する目的がある.また,枠内を植生やコンクリート等で被覆したり,アンカーエ,補強鉄筋工と併用して一層の効果を上げることができる.本研究では,法枠内部に発生する応力状態を明らかにする事を目的に検討を行った結果を示す.
超高層建築物の窓外景観を前提とした視覚による振動知覚
―VDの利用による実験研究―

原健二、猪俣千穂、三好ゆか、後藤剛史
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強風は超高層建築物に並進振動、ねじれ振動という2種類の長周期水平振動を発生させる。これらの振動の内、並進振動に対して、居住性の評価という観点から人体反応や評価に関する研究が多く行われ、基準や指針が制定された。しかし、この基準や指針は体感知覚による評価のみを対象としている。今回の研究では超高層建築の窓外景観からの視覚情報によって振動を知覚したとき、その振動の評価に対する景観の影響、並進振動とねじれ振動についての評価の違いを調べたものである。
技術社会論・経済学のオンライン・コンピュータテスト(OCT)・レポート(OCR)によるIT教育革新実験
―法政大学工学部のIT教育教学改革事例―

後藤公彦
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<概要>本研究は法政大学教学改革の一環として以下の目的のため法政大学内外の関係者のコンセンサスを得て実行された。
(1)インターネットを通じて得られる為替市場および資本市場・マネーマーケットのオンライン情報を用いて、資産の理論価格と時価の乖離度をリアルタイムで算出し、コンピュータ技術事例を修得し、経済学・経営学・技術社会論等の講義に定量的解析を取り入札、経済分析・予測を定量的に行うこと、
(2)コンピュータ技術修得に目的を与え、明確化することにより、理系の学生にとっても経済学・経営学は生き学問であり自分の将来に役立つことを理解させること、
(3)大学の期末試験・中間試験・通常の授業にオンライン・コンピュータテスト(OCT)・レポート(OCR)を取り入れることにより学生に学問に対ずる興味とモチベーションを与えること、
(4)デリバティブ時価会計問題と解答を学内LANにより送受信し、難解とされる現代ファイナンス理論をカレントな為替・金利晴報を用いて修得させること、
(5)模範解答を提出した者にコンピュータ教育システム(ソフトおよびハード)を使ってプレゼンテーションを行わせ、他の学生にも自分と同等の実力をつけさせるとともに社会に出てから必要な説明・説得方法を取得させること、
(6)教室内外のディスカッションにより学生同士が切磋琢磨しあい実力と友情を享受しながらキャンパスライフを明るく楽しくする環境を作ること、
(7)遠隔地の両親と出題された経済学・経営学のコンピュータレポート問題についてインターネットを通じで晴報収集・交流することにより学校教育への信頼、両親に対する尊敬・理解を深めさせること、およびこれらにより、
(8)大学が社会と国家の安寧と進歩に貢献すること。
以上の目的のために新しいIT教育晴報システムを確立し、当教育実験の中間報告を行い、衆知を集めつつ討議・切磋琢磨してさらに教育の改善・改良につくしたい。
多孔質体の弾塑性損傷進展解析
内田亮介、草深守人、石田則道
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ゴミ焼却灰の再資源化を目的として開発された焼成増粒物を建設材料として利用する用途技術の開発が進められている.本文では,リサイクル材として開発された比較的粒径の揃った粗粒な増粒物の集合体である多孔質固化体に対する損傷モデルの適用性について考察した.採用した損傷モデルは,熱力学的考察により定式化された進展型の等方損傷構成方程式に従った.このモデルによる解析結果は基本的な材料試験である3軸試験結果と比較された.その結果,粗粒子の集合体が,多孔質体としての構造を維持する限界ひずみを推定することが可能であることを示唆した.
空気の流れ解析
石田則道
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目に見えない(,見えにくい)現象をコンピュータを用いて可視化することで,新しい情報を取り出し現象を解明する新しい学問が新しい時代を切り開きつつある。その中で計算流体力学(CFD :Computational Fluid Dynamics)技術は,熱移動など流体の流れ現象に新たな注目がなされている。そこで,汎用流体解析ソフトウェアを使って空気の流れ解析を試みる。
n次元双直交ウェーブレット変換とその応用
松山佐和
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本論文では、離散値系ウェーブレッド変換における数学的・物理的特徴を、1次元、2次元、3次元ウェーブレッド変換についての考え方を順に示す中で明らかにし、最終的にn次元ウェーブレッド変換へ発展させる。ここではドビッシーの2次基底関数を用いているが、各現象において適切な基底関数を選ぶことにより、周波数解析や画像処理への多次元ウェーブレッド変換の可能性について述べる。
VRMLによる正多面体とアルキメデスの多面体の表示
松山佐和
PDF   抄録
ここでは、正多面体とアルキメデスの多面体について、多面体間の相互関係を示しながら、VRMLを用いて立体的に表示する手法を示す。VRML(Virtual Reality Modeling Language)は、画面上に奥行きをもつ仮想の三次元空間を表現し、その空間上に、静止立体や動的な立体を表示できる。また、VRMLファイルは、簡単な機能のテキストエディタがあれば作成でき、ブラウザソフトによりディスプレイ画面上に表示できるため、最も手軽に誰でも使用できるツールである。この手法はこれらの多面体のみならず様々な立体に応用できる。