vol.12 (1999)

計算科学研究センター 研究報告
Vol.12, 1999 ISSN 0913-8420 1999年3月31日発行

気泡除去装置内旋回流れの数値解析(気泡除去性能の評価)
山本彦文、田中豊、新井和吉、鈴木隆司
PDF   抄録
油圧システムにおけるパワーの伝達媒体である作動油中に含まれる気泡は,システムの動作特性に影響をおよぼし,多くの場合,油圧機器のトラブルの原因となる.本研究は,油圧システムの特性を改善するために開発された気泡除去装置について,装置内旋回流れの数値解析を通して,最適な装置設計に関する指針を得ることを目的としている.本報では,二相流の数値解析を通して,時間の経過にともなう気泡粒子の挙動を検討するとともに,気泡除去装置の流入口やテーパ管路部の形状が,旋回流れにおよぼす影響を明らかにし,装置の気泡除去性能を評価する.
三次元分布データの可触化
青野哲巳、田中豊
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科学技術データをいかにわかりやすく人間に伝えることができるかという問題が重要になってきている.最近のコンピュータ技術の進歩で,コンピュータグラフィックスによる実環境下の物理現象を表す三次元分布データの表示が可能である.しかし,三次元分布データの理解において従来の視覚提示手法では現実感,相互作用感を表現するには限界がある.そこで,本研究ではデータの理解に,より多くの情報を直感的に理解できる新しい洞察の機会を与えることを目的とし,三次元分布データを表示する際,従来の手法に立体視覚と接触感覚を結び付けている.本報では,バーチャルリアリティ技術を応用したサーフェスモデル提示システムの構築結果について報告する.サーフェスモデルとは,物体の表面形状を定義した三次元分布データのことである.構築したデータセンシュアライゼーションシステムを用いて強化された感覚によるデータの理解と把握の容易性は実験的に確認された.
次世代遠隔教育支援システムの開発
 (教員学生間の双方教育の試み)

田中豊、中井博胤、松山佐和、岩崎晴美
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近年コンピュータを用いた教育(CAI)が様々な分野で実践されている.しかし従来のCAIは,情報の流れがデータベースから学習者への一方通行であり,教材の適用分野も限られていた.本研究では,コンピュータを利用した,より安価で容易な遠隔教育支援システムの開発と,学習者が興味を持ってより効果的に学習できる教材の開発を目的として,ネットワークを用いた教員・学生間における情報の双方向交換を可能としたシステムの構築を行い,人工現実感’(VR)生成技術を用いたVR教材の作成と,システム上での試験運用を通して,システムおよびVR教材の有効性を検討する.
遷音速圧縮機翼列内の流れの数値解析
内馬場俊之、高田裕正、赤坂啓、辻田星歩、水木新平
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軽量かつ低燃費の高性能ジェットエンジンの開発は現代航空機エンジンにとっての大きな目標である。それゆえ、高圧縮比の圧縮機翼列を持つ遷音速軸流圧縮機が必要となってくる。しかし、一般に圧縮機内の流れが遷音速状態になると衝撃波と境界層との干渉による境界層のはく離が発生し、その結果全圧損失を引き起こすことが知られている。このため、過去10数年に渡り、衝撃波と境界層との干渉現象について多くの実験的研究が行われてきた。近年では数値流体力学(CFD)を用いて実験だけでは捉えられない詳細な流れ場の解明が行われてきている。
水の気液界面の分子動力学による解析
片岡洋右、真下忠彰
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われわれは、記憶関数法を用いて凝縮係数を計算した。その結果、凝縮係数の計算においては分子交換現象も考慮に入れなけれぱならないという結論に達した。そこで、われわれは分子交換の特性を明らかにするために、水の分子動力学(MD)シミュレーションを行った。その結果、分子交換は入射・脱出分子の衝突ではなく、間接的な相互作用により起こることが見出された。
人間型冗長マニピュレータの姿勢決定法
梅木嘉道、高橋和幸、松村勇、樹野淳也、小林尚登
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現在我々は,人間と同等の7自由度を持つ冗長マニピュレータを用い,ハンドに取り付けられたCCDカメラから得られる瀏像情報を利用した物体把持に閧する研究を行っている.対象物を把持するためには形状に合わせ,手先効果器の姿勢を考慮する必要かある.そこで本報告では,この姿勢に関する順運動学およぴ逆運動学について述べ,さらに逆運動学に存在する特異点問題に関して考察する.
カレントビューアに関する研究 -電流分布のデコンボリューション-
青木誠、早野誠治、斎藤兆古
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プリント基板のような平面上の電流分布を推定するため、我々はカレントビューアを提案した。実験によって、通常用いられるソレノイド型コイルよりも良好な推定解を得たが、推定する導体間の距離が接近している場合には、なんらかのソフト的処理が必要となる事が判明した。本稿では、そのソフト的処理方法としてデコンボリューションを行い、さらに精度の高い電流の位置推定を行うためGSPM法を用いた電流分布推定を行った結果を報告する。
フェライトトロイダルコアに関する電磁界分布の一解析法
小林宣之、早野誠治、斎藤兆古
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高周波駆動を前提とした磁気素子は、数ターンのコイルで構成されているため、必然的に漏れ磁束を伴う。そこで、磁気素子の漏れ磁束を考慮した最適設計を行うべく、その第一段階として、周辺領域を含めたフェライトトロイダルコアの電磁界分布解析を行う。この開領域軸対称三次元問題解析に対し、入力項に磁流密度を導入し、電気影像法を拡張した双対影像法により有限要素解を導く。
任意形状コイルのインピーダンス対周波数特性解析に関する研究
高野貴正、早野誠治、斎藤兆古
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高周波動作を前提とする磁気素子は、媒質や幾何学的形状で決定されるインダクタンスや抵抗を一定値とみなせず、周波数の関数として変化するパラメータとして考えざるを得ない。このため、媒質や幾何学的形状で決定されるインダクタンスや抵抗を求めるには、装置や素子のモデリングや離散化法などに習熟しなければならない。そこで、本論文では、任意形状コイルのインピーダンス対周波数特性の簡易計算方法として準解析的手法を提案する。
逆問題解析手法による放射線源探査
武居周、早野誠治、斎藤兆古
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本報告では、センサーがケーブルに沿って連続した放射線分布を測定可能とする光ファイバ放射線モニタを前提とした、放射線源分布推定問題について検討する。この問題は、既知の情報であるセンサーの位置での放射線強度から情報源である放射線源の位置と強度を推定する逆問題である。原理的には、電界強度から電荷を推定する問題と等価であり、電磁界系逆問題の代表的な応用例である。また、逆問題解析により得られた推定解より3次元空間の放射線強度分布を可視化するシステムの原理検証について述べる。
不適切な線形システムのウェーブレット解析
中島賢、早野誠治、斎藤兆古
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磁界系逆間題解析をするとき、殆どのケースで不適切な線形システム方程式を解くことに帰する.これまでに疑似逆行列法をはじめとしてさまざまな数値解析法が提案されている.筆者らは、逆問題解析法の一方法としてウェーブレッド変換を用いた解析法を提案する.本稿では、ウェーブレッド逆問題解析法の基礎理齢から議論を始め、身近な問題としてプリント基盤上の電流分布推定に関する基礎資料となるべく簡単な例題と実験を取り上げた.
3次元電磁界分布可視化に関する研究 -支配的磁界分布の抽出法-
宮原晋一郎、早野誠治、斎藤兆古
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本論文では電子機器近傍の電磁界分布を可視化する一方法を提案する。まず最初に、局所的に測定された磁界から磁界源分布を逆問題的手法で推定する。次に、推定された磁界源から電子機器近傍の磁界分布を計算し可視化する。最後に3次元ウェーブレット変換を用いて主要な磁界分布を抽出する。
システム非線形度とボルテラ級数を用いた推定
水田博久、猪俣望、八名和夫
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本論文において、観測されるシステムの入出力時系列からシステムの非線形の度合を表す指標とポルテラ級数を用いた推定法について論じる。まず、最適線形系とパラメトリックな非線形システムモデルによる出力予測誤差の差を用い、非線形モデルを条件とした条件付き非線形度を定義した。この指標はシステムが線形の場合0、入出力が無相関になり線形系による予測が不可能な場合に1となる。しかし、最適モデル構成の決定については議論していない。そこで本論文ではポルテラ級数による非線形モデルを考えた場合について最適モデル構成を決定し。効率的に非線形度を推定ずる手法を提案する。
有限要素法による板状領域に対する3次元移流拡散解析
鈴木良明、武田洋
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構造解析において,板やシェル状のような構造物はその形状特性を考慮すると三次元解析よりもむしろ二次元解析によって解かれる.本論文では,対象領域を板やシェル状として,移流項を含む移洸拡散解析に対する効率の良い定式化のシュミレーションを提案する.
力学現象の可視化に対する考察
新津貴男、武田洋
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本論文では数値解析結果の物理的解釈を的確に行うために、コンピュータグラフィックスを用いた可視化について考察を行う。有限要素法によるスカラー、ベクトルおよび二階のチンソルに対する全体的な方向場を可視化するための手法に対し考察し、3次元での実現を目指す。
有限体積法による進行型破壊現象の解析
新津貴男、武田洋
PDF   抄録
有限体積法(FVM)では,辺を基にしたデータ構造を扱うことにより,制御体積の境界辺に沿った境界積分を用いて要素行列やベクトルを計算している.このため節点での変位の連続性が要求される有限要素法よりも比較的容易にき裂の進展などの不連続な現象が導入できる.そこで本論文では,弾塑性問題における有限要素の概念を導入した有限体積法の定式化を増分形式で行い,数値例として弾性解に関する精度を検討する.そして最後に進行型破壊現象についての解析を行う.
講義「Visual C++を用いる画像処理」のための教材制作
森下巌、松田修三
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講義「Visual C++を用いる画像処理」のために制作した教材について報告する。学生自身が画像処理アルゴリズムをプログラミングして処理結果を検討できるように、画像処理の講義にプログラミングの教育を取り入れた。Visual C++には、高レベルの機能を備えていてWindows上で動作するプログラムを容易に作成できる、本学の学生はだれでもキャンパス内の設備で利用できる、などの利点がある一方、非常に大規模なものであるために、初心者にはとっつきにくいという欠点がある。本文では、初心者にも理解が容易になるように構成した教材の一例を報告する。教材は、プリントして学生に配布する講義ノートと、教室でビデオ・プロジェクターを用いてデモンストレーションするプログラム例で構成されている。この教材は数回使用したが、その教育効果の組織的な評価はまだ試みていない。
GISを用いた浸透能力マップの作成および分布型降雨流出モデルの構
中村衆栄、岡泰道、西谷隆亘、小寺浩二
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都市型洪水の流出抑制対策として雨水浸透施設の導入が進められているが、抑制効果の定量化を始めとして、技術的課題が多く残されている。本研究では、地盤毎の浸透量および浸透施設設置に伴う効果を定量化することを目的として、土地利用を考慮した分布型流出モデルを構築した。流域を浸透能力の異なる土地利用ブロック毎に扱う必要から、浸透能力マップ作成のための支援ツールとしてGISソフトウェアを用い、その有用性を確認した。さらに、数値標高地図より尾根線と河道網の描画を試み、納得できる結果を得た。
静水圧依存型材料の異方性降伏関数と材料パラメータの評価
兼重剛、富岡洋一、伊与田宏幸、青柳秀明、草深守人、武田洋
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本文は静水圧に依存する異方性材料の降伏関数について考察したものである.まずはじめに, Hillの異方性降伏関数を静水圧依存型に拡張した代表的な降伏関数であるPariseauの降伏関数の力学的意喋を考察することによりその適用範囲を明確にした.次に,材料主軸方向の異方性の割合が静水圧応力に依存して変化するような直交異方性材料に対して,従来の基本的な降伏関数の自然な拡張として与えられるより一般化した異方性降伏関数について考察し,新たな静水圧依存型異方性降伏関数を提案した.この降伏関数は,降伏曲面の大きさと偏差平面の形状が共に静水圧応力に依存するものである.また,この異方性降伏関数に含まれる材料パラメータをごく一般的な試験によって決定する方法が示された.最後に,異方性岩盤材料に対する試験結果と計算値の比較がなされ,提案する降伏関数が従来の降伏関数に比較して,異方性の表現性に優れていることを示した.
相関関数法による地震波の位相検出のアルゴリズム(1)
小口雄康
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1地点における2成分以上の地震波記録から各種の位相を自動検出する方法の1つにKanasewichの相関関数法があり,最近Anat & Doqlaがウェーブレッド変換を用いて発展させている.その基本的な考え方は記録間の相関関数から相関マトリックスを構成し,その固有値の比の変化から位相を検出しようというものである.彼らはヨーロッパで観測された遠地地震記録の解析で有効であることを報告している.本報では,この相関関数法を比較的雑音の多い日本付近の近地地震や人工地震に適用することを目的として計算アルゴリズムを整理した結果を示したものである.第1報ではP波検出についてまとめ,やや大きな近地地震について有効であることを示した.
サイバー空間と空間構造
國井利泰
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様々な機器がコンピュータネットワーク上でグローバルに常時接続される時代に入って、Jiniを初めとする様々な環境がベンダー等から提案されている。しかし、このようにして創られるサイバー空間の空間構造については、全くといって良いほど科学的研究がなされていない。これは、現実にサイバー空間上に人工世界を合成する工学上の立場からは、基盤無き建築で、重大な問題を提示している。本論では、この問題について、簡単な例を以て、一つのアプローチを提案する。
ベクトル場へのウエーブレット変換の適用
石田則道、小口雄康、松山佐和、斎藤兆古
PDF   抄録
ベクトルデータにウェーブレット変換を適用するとベクトルデータに含まれるノイズが削減されることが知られている。そこで、ヘルムホルツの定理に基づき、任意のベクトルをベクトルポテンシャル(回転成分)とスカラーポテンシャル(発散成分)の和に表現する。二次元ベクトル場でのポテンシャルは長方システム行列となる。いわゆる不適切問題であり、その逆問題の解を最小ノルム法によって一意的に計算できることを述べ、最小ノルム法で得られたポテンシャルへウェーブレット変換を適用し、ベクトルデータに含まれるノイズがどの程度軽減できるかを述べる。具体的な例として、気流データにこの手法を適用し、その実際を検証する。
3次元ウェーブレット変換の電磁界分布データへの応用
松山佐和、小口雄康、宮原晋一郎、斎藤兆古
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ウェーブレット変換は波形データの周波数解析やノイズ成分の低減、画像データの圧縮などに適用されている。1次元および2次元ウェーブレット変換の適用例はこれまでにも数多くあるが、3次元ウェーブレット変換の適用例はまだ少ない。本稿では3次元離散値系ウェーブレット変換の具体的な応用として誘導加熱コイルが生ずる3次元電磁界分布データを取り上げ、3次元電磁界分布データをウェーブレット変換することにより、支配的な電磁界ベクトルが抽出され、データの圧縮およびノイズ成分の低減が可能であることを示す。
ウェーブレット変換による3次元ベクトルデータのノイズ低減
松山佐和、小口雄康、斎藤兆古
PDF   抄録
1次元および2次元ウェーブレット変換の適用例はこれまでにも数多くあり、特に、波形データの周波数解析やノイズ成分の低減、画像データの圧縮などに適用されている。本稿では3次元空間に分布する3次元ベクトルのモデルデータに離散値系ウェーブレット変換を適用し、3次元ベクトルデータのウェーブレット変換においても1次元、2次元ベクトルデータと同様に大きなベクトルがマザーウェーブレット近傍に集中すること、さらに、支配的なベクトルを抽出することによりデータの圧縮およびノイズ成分の低減が可能であることを示す。
「坊ちゃん」と「三四郎」の線形空間論による文体解析
岩崎晴美、斎藤兆古、宮澤賢治、堀井清之
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文学作品の文体解析は、その作品を解析する人の感性と知識・経験・考え方などによるところが大きい。文学作品をある視点に基づき計数化を行い、数量化したデータに線形空間論を適用した文体解析の手法を提案しているĢøĤ。文学作品の文体解析に数学的手法を用いて評価することと可視化することを試みている。ここでは夏目漱石の「坊ちゃん」と「三四郎」の作品について、話法という視点でとらえて分類した頻出度ĢùĤóĢúĤを基に文体解析を行った結果を考察する。
地形学・水文学における地理情報の処理手法について
 (数値地形モデルを用いた流域地形計測の試み)

中山大地、小寺浩二
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地形学、水文学などの地球科学分野では、近年地理情報システム(GIS)を用いた解析が行われるようになってきた。GISで扱うデータにはベクトル型データとラスタ型データがあり、ラスタ型データには衛星画像や数値地形モデルなどがある。地形学、水文学の分野ではDEMから流路網を抽出し、これを用いて地形計測を行ったり流出モデルを構築するといったことが必要になる。流路網と絡めた場合、DEMはラスタ型データにも関らず、ネットワークの構造を持つことになる。このため、画像解析によく使われるフィルタ型の演算だけでは処理をすることができなくなる。そこで、本稿では流路ネットワークとDEMを使った地形解析の実際について述べ、そのアルゴリズムを紹介する。