vol.11 (1998)

計算科学研究センター 研究報告
Vol.11, 1998 ISSN 0913-8420 1998年3月31日発行

超高負荷タービン翼列内の流れの数値解析
廣畑渉、辻田星歩、水木新平
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気泡除去装置内旋回流れの数値解析
田中豊、山本彦文、新井和吉、鈴木隆司
PDF   抄録
油圧システムにおけるパワーの伝達媒体である作動油中に含まれる気泡は,システムの動作特性に影響をおよぼし,多くの場合トラブルの原因にもなる.したがって油中の気泡を除去することは,油圧システムの特性を改善するために重要な課題である.本論文では,最近開発された旋回流を利用した簡易な仕組みにより,効率よく気泡を除去できる気泡除去装置内の流れの数値解析結果について述べる.気泡除去装置の内部管路形状
の違いが,旋回流の挙動や圧力分布におよぼす影響を明らかにし,気泡の除去原理を形状の面から定性的に説明する.
伝送時間遅れを考慮した作業ロボットの遠隔作業システムの構築
大木保博、根本祐介、田中豊
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一般に遠隔作業システムにおいてはデータ転送時に時間遅れが生じる,この時間遅れの大きさは,伝達媒体の特性やその負荷に依存する.そのため,作業側と操作側を含めたフィードパック系を安定して制御することは困難である.本研究では.この問題を解決するために,伝送時間遅れを考慮した作寨環境を構築し,その時間遅れ補償の可能性を検討する.
二次元Lennard-Jones流体の臨界点近傍における相互拡散
片岡洋右、吾郷健一
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われわれは、Taylor拡敵法を用いて超臨界二酸化炭素申のアセトン、ベンゼンの相互拡散係数を求めた。その結果、臨界点近傍において相互拡散係数が0に近づくという現象を得た。この現象については、同樣の結果がいくつか報告されている。そこで、われわれはその拡散機構を明らかにするため、分子動力学法を用いてシミュレーションを試みた。その結果、臨界点近傍では大きな濃度の揺らぎがこの拡散異常に関係していることが分かった。
磁気ヒステリシスを考慮したスイッチング電源の過渡解析
小林宣之、早野誠治、斎藤兆古
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スイッチング電源は、コンピュータなどさまざまな電気機器に電源装置として利用されており、常に高精度化・高効率化などが求められている。スイッチング電源の欠点としては、スイッチング電源は磁性体内に蓄積されたエネルギーを利用するため、その動作は磁性体の磁化状態に大きく左右される点である。そこで、著者らは磁性体の磁気ヒステリシスを含めたスイッチング電源の過渡解析を行い、スイッチング電源の改良を検討している。
水文学におけるGISの活用法に関する基礎的研究
中村衆栄、鈴木香苗、小林信彦、新川幹朗、小寺浩二、西谷隆亘、岡泰道
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水文学の研究においては、変化の激しい複雑な地理情報を流峨単位で効米的に利用する事が必要である。急速に進歩しつつあるGISの手法は、水文誌を中心とした流域データベースの構築のみならず、流出解析など様々な水文学上の課題への応用が期待されている。そこで、本研究では、PCベースのGISフトウェアであるArcView3.0aを用いて、多摩川支流浅川流域の分布型流出モデルの構築を念頭に、空間データベース及び解析ツールとしての有効性を検証した。その結果、形式の異なるデータの作成と合成の作業における今後の課題や、ソフトウェア間でのベクターデータり互換性に関する問題点が明確になったが。単独のソフトウェアでは、カスタマイズを行うことにより十分流出モデルの解祈ツールとして有効であることが示された。
相対論的平均場理論を用いた原子核の密度分布と非圧縮率との相関
吉田智
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重い原子核の中心部の核子密度はほぼ一定である。このことから理論的に原子核内の核子間に作用する核力の性質や原子核の構造、さらには中性子星の構造を研究するために、一様密度で無限大の大きさを持つ植物質と呼ばれるものが用いられる。この核物質の性質を示すものが非圧縮率である。この値は原子核の巨大単極子振動の励起エネルギーから求められる。しかし巨大単極子振動の励起エネルギーの測定は難しいために、現在はまだ良い精度で非圧縮率の値を決定することができない。まして、中性子星のように中性子数と腸子数の比が地球上に安定に存在する原子核の比より遥かに大きい場合には、そのような原子核が実験室内で作られてきてはいるが、励起エネルギーの測定は現在は不可能である。そこで原子核の密度分布から直接非圧縮率が求められないかという発想から、まず試みとして相対論的平均場理論の計算を用いて、非圧縮率と原子核の表面のぼやけとの相関について調べた。
ベンジル位カチオンの非経験的分子軌道計算
中田和秀、中島弘一、太田九二、藤尾瑞枝、三島正章、都野雄甫、西本吉助
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α位(ベンジル位)に各種置換基を導人した20穐類のベンジル位カチオン及びそれらの共役塩芯の構造をRHF/6-31G*レベルの非経験的分子軌道計算により最適化した。エネルギーはMP2/6-31G*//RHF/6-31G*+ZPE(scaled 0.9)レベルで計算した。それらの値を用いて算出したプロトン移動反応のエネルギー計算値は対応する実験値を良い精度で再現した。そこで得られた物理量と対応するソルボリシス系の湯川一都野式によるr値を比較した。結合距離,結合次数,電荷の分布はr値に対して直線相関を与えた。相関結果からr値が共鳴の度合を表すパラメータであるという理論的根拠が得られた。
Faddeev-Separable-Expansion法によるクローン三体束縛状態
小池康郎
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クーロン束縛状態に対する新しい解法を提案する。ここでは、有限領城の相互作用のもとでスタンダードに用いられる、Faddeev理論を用いる。クーロンカは長距離力であるため。Faddeev理論はそのままでは用いられない。しかしここでは、東縛状態に限っては、三体方程式がたてられることを示す。また、有限領域の相互作用に対してスタンダードに用いられる、セパラブル展開法がこの場合にも同様に用いることが可能であることを示す。最後にモデル計算での収束例を数値的に示し、この方法が計算機物理学の重要な応用分野であることを示唆する。
成層構造の周波数特性を安定して計算する一方法
秋山喬二、小口雄康
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成層構造の周波数特性の計算方法には,斎藤の積分法,Haskellのマトリックス法など,よく知られた多くの研究があるが必ずしも安定した計算結果を与えるとは限らない。Kennettらの理論地震記象の計算法は安定した計算結果を与えるよう工夫されている。この方法をわれわれの目的に応用して,複素数計算なしでパーソナルコンピュータでも容易に計算できるプログラムを開発した。この方法を,複雑な層構造に適用した結果,高周波領域においても安定した計算ができることがわっかた。
Wavelet変換による不適切な線形システムの解析
石田則道
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係数行列が長方行列となる不適切なシステムは出力の一部から入力源を求める逆問題に必ず存在する。このような問題を解決する方法として、線形系のシステム行列の要素をイメージデータと見なし、離散値系ウェーブレッド変換によってシステム行列の支配的要素を抽出することでシステムの近似解を得る方法を提案する。
イメージ行列における近似解の精度改善
石田則道
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係数行列が長方行列となる不適切なシステムを解決する方法として、線形系のシステム行列の要素をイメージデータと見なし、離散値系ウェーブレッド変換によりてシステム行列の支配的要素を抽出することでシステムの近似解を得る方法を提案した。しかし、ウェーブレッド変換のデータ圧縮過程に起因する誤差が解に影響し、解の一部に誤差が集中する。そこで、解の周期性を長く仮定する高次の基底関数を用いた近似解の誤差を取り除く方法を検証する。
ウェーブレット変換を利用したヴァンデルモンデ型の近似解析
岩崎晴美、小口雄康、斎藤兆古
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ヴァンデルモンデ型は、システム行列が特異点となり、逆行列が計算できない線形システムである.線形システムであるポアソン方程式の解を求める方法としてウェーブレッド変換を利用した近似解析は、大変有効な手法である事が判った.ヴァンデルモンデ型のシステム行列についても、システム行列をイメージデータとして扱いウェーブレット変換を利用して逆近似解析を行ってみた.
ウェーブレット変換を利用した線形システムの近似解析への試み2
岩崎晴美、小口雄康、斎藤兆古
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多くの物理解析は、連立方程式を解くことに帰する.この解を求める方法としてウェーブレッド変換を適用した方法を前回の研究報告において提案し、その有効性を示した.今回は、その解の改善を行った.
文学作品の線形空間論による解析
岩崎晴美、斎藤兆古、宮沢賢治、堀井清之、金田知子
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文学作品における文体解析は、作品を解析する人の知識・経験・考え方などによるところが大きい。ここでは、数学的手法を用いて文学作品を評価することを試みた。作品をイメージとしてとらえ、作品に使用されている話法について分類し、頻度を数値データに置換する。その数値データに線形空間論を適用して、その作品の構成、性質などを考察する。例として夏目漱石の作品「草枕」を取り上げた。
ウェーブレット解析によるベクトルデータのノイズ低減
松山佐和、小口雄康、斎藤兆
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これまでのウェーブレット変換の適用例は波形データの周波数解析や画像データの圧縮などが大部分である。本稿ではベクトルデータにウェーブレット変換を適用することを試みる。ノイズを含むモデルベクトルデータを設定し、これをウェーブレット変換することで、ベクトルデータにおいてもスカラーデータと同様の方法でデータを圧縮でき、ノイズ成分の低減が図れることを示す。
ウェーブレット変換の海洋・気象データへの応用
松山佐和、小口雄康、斎藤兆古
PDF   抄録
ウェーブレット変換の特徴の一つにデータの特性をウェーブレットスペクトラムのマザーウェーブレット近傍に集中させることが上げられる。スカラーデータの圧縮にはこの特徴が利用されている。本稿では、海洋・気象データにウェーブレット変換を適用した結果、スカラーデータと同様にデータの特性がウェーブレットスペクトラムのマザーウェーブレット近傍に集中し、データの圧縮が可能であることを示す。